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2016年度龍谷大学国文学会ならびに龍谷学会共催学術講演会のご案内

今年も例年にならい、研究発表会・総会を行う運びとなりました。
また今年度も、龍谷学会との共催で学術講演会を開催いたします。
参加費は無料です。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

以下詳細

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◆2016年度龍谷大学国文学会 研究発表会・総会ならびに学術講演会
 日時:2016年6月25日(土) 13:30〜
 会場:龍谷大学大宮学舎 北黌204教室



■研究発表会(13:30〜15:00)
・『為兼卿和歌抄』の「いきほひ」について
                       本学大学院博士後期課程   檜垣   駿 氏 

 『為兼卿和歌抄』(以下『和歌抄』と称す)は、京極為兼の歌論を知る第一の資料である。弘安八(1285)年以降十年の間に、春宮熙仁親王(のちの伏見院)のために執筆したものと考えられている。歌論の主旨は、詠歌対象に心を深く沈潜させて「心に詞をまかする」ことであり、絶対的な「心」の尊重にその眼目がある。また、この主張には『文鏡秘府論』などの詩論や『声字実相義』の密教思想、法相宗の主たる経典である唯識論など、多様な方面からの影響が指摘されている。
 本発表で扱う「いきほひ」の言葉は、『和歌抄』の中で二度用いられている。この「いきほひ」について、先行研究では、『和歌抄』の用例が歌論で用いられた初出であることや、京極派歌合の『二十番歌合』判詞に一例見られることを指摘している。しかし、先行研究では上記の事実を指摘し、京極派内で「いきほひ」の言葉が「重視」されたであろうことを述べるのみであって、『和歌抄』中での意味や、為兼がこの言葉を用いた意図については考察していない。
 「いきほひ」の言葉は、一般に、他を圧倒する力や瞬間的なエネルギーを意味することが多く、「盛ん」などの言葉で形容される。ところが『和歌抄』では、例えば「いきおひのふかき事」とあるように、為兼は「いきほひ」を「深い」の言葉で形容しているのである。このように、為兼は「いきほひ」の言葉に一般とは異なる独自の意味づけをしていたと考えられる。
 本発表では、『二十番歌合』の伏見院判詞と『和歌抄』の本文を詳細に検討することで、為兼が「いきほひ」の言葉をどのように意味づけし『和歌抄』に用いているのかを明らかにする。



・建久六年民部卿経房家歌合の詠歌と俊成判詞
                          本学文学部教授   安井  重雄 氏 

 建久六年(一一九五)『民部卿経房家歌合』は、吉田経房主催、俊成判、五題一一五番の歌合である。俊成・定家・家隆・顕昭・季経ら歌道家歌人の他、源光行(河内学派祖)、性照(平康頼)らが出詠する。跋文に、和歌について「たゝ詠みもあげ、うちも詠たるに、艶にもおかしくも聞こゆる姿のあるなるべし」という、『古来風体抄』『慈鎮和尚自歌合』十禅寺跋に再説される著名な秀歌論を有するが、この秀歌論と俊成歌以外にはそれほど言及されることのない歌合である。その理由としては、既に『六百番歌合』が行われるなど『新古今集』に繋がっていく良経家歌壇の催しが活発な中、当該歌合にはいわゆる新風歌人の出詠が少なく、『新古今集』にはわずか二首(いずれも二条院讃岐)を供給するに過ぎない点が大きいであろう。しかし、近年、当該歌合にも出詠する平安末期から歌壇活動を続ける歌人たちとその催しへの注目もあり(中村文『後白河院時代歌人伝の研究』)、当該歌合における詠歌の特色とその判詞について考察を加える必要も出てきていると思われる。
 当該歌合は、「紅の霞」(殷富門院大輔)、「花の雲しく」(季能)といった新しい表現、「花になりゆく嶺の白雲」(寂蓮)、「霞にもるる花の色」(有家)といった新風の流行表現を詠む歌人がいる一方、「中頃の体」(『無名抄』近代古体)即ち旧風の歌人もいる。また、特に新風的に詠んでいるのは家隆であるが、一方で新風を牽引する定家にはそれほど新風らしい表現は見えない。こういった詠歌に対して、判者俊成はどのように対しているのであろうか。当該歌合の俊成判詞には「良経定家らの新風の行き過ぎへの批判」(松野陽一『藤原俊成の研究』)も見えるとされるが、俊成判詞についても考えたい。


■総会(15:10〜)

龍谷学会共催・学術講演会(16:00〜)
 ゼロ形式が作る古典文の構造――古典文の正確な把握のために――
                        國學院大学文学部教授   小田   勝 氏 


※懇親会(17:30〜)  於 龍谷大学大宮学舎 清和館2階生協食堂(会費5,000円)