【公式】龍谷大学国文学会 ニュースBLOG

龍谷大学 国文学会からのニュースを掲載するブログです!

2011年度 秋の文学散歩のご報告

2011年度秋の文学散歩について御報告いたします。


◆秋の文学散歩(2011,11,20)

開催地 泉涌寺 

●当日の様子(以下 学生研究会による報告)

平成二十三年十一月二十日、秋の文学散歩が行われました。
今年の行き先は、紅葉の美しさでも有名な泉涌寺でした。泉涌寺は、皇室の菩提所として、室町初期から江戸末期までの多くの天皇、皇后、親王の石塔や灰塚が営まれています。境内は、「御寺」という呼称にふさわしく、独特の雰囲気に満ちていました。


当日は、十三名の方が参加して下さいました。京阪東福寺駅前で集合し、それぞれ飲み物などを購入し、徒歩で泉涌寺に向かいました。
ちょうど紅葉の時期ということもあり、駅前は東福寺に向かう方々でとても混雑していました。しかし、泉涌寺へ向かう道は比較的人が少なく、景色を楽しみながら歩くことができました。

歩いて行くと、まず泉涌寺の総門が目に入りました。総門の手前で左側の道に入ると、阿弥陀如来坐像や二十五菩薩坐像が祀られている即成院があります。
即成院の中に入り、奥へ進むと、那須与一の墓が祀られていました。那須与一については、『平家物語』の「扇の的」に、その活躍が描かれています。与一は屋島の戦いにて、平家が立てた扇の的を見事射落としたとされています。この伝承から、『願いが的へ』と願い事を扇に書いて祈願される方が、多数お参りされるそうです。

即成院を出て総門をくぐると、両側に木が生い茂った小道が続いていました。頭上まで伸びた木々のおかげで小道は影になっており、涼しげでした。また、足下にはたくさんのドングリが落ちており、どこか懐かしさを感じました。とても拾いたかったのですが、我慢しました。幼い頃に拾ったドングリから謎の虫が出てきたことが、今でもトラウマになっているからです。
そんな話をしているうちに、重要文化財にも指定されている泉涌寺の大門が見えてきました。
この大門の前で、記念写真を全員で撮りました。

観光に来られている方に撮影をお願いしたところ、とても親切で陽気な方だったので、みんないい笑顔での写真が撮れたと思います。


大門をくぐり、まずは水屋形の傍にある清少納言歌碑を見物しました。
「夜をこめて鳥のそらねにはかるともよに逢坂の関はゆるさじ」という百人一首にも採られている有名な歌が彫られています。文学散歩担当者が、歌が詠まれた背景や解釈を話して下さいました。


続いて、仏殿の中に入りました。仏殿内陣には運慶作と伝えられる阿弥陀、釈迦、弥勒の三尊仏が安置されています。また、天井には狩野探幽筆である龍がとぐろを巻いています。天井に描かれた大きな龍の姿は、とても迫力がありました。
さらに、毎年三月十四日から十六日の間は、古礀明誉筆の「大涅槃図」が公開されているそうです。この「大涅槃図」は、縦十六メートル横八メートルの巨大なものだそうで、是非観に行ってみたいと思いました。


仏殿の隣にある舎利殿は、残念ながら中に入ることはできませんでした。舎利殿では、釈迦の仏牙舎利が奉安されています。仏殿と同様に、舎利殿の天井にも狩野山雪筆の蟠龍図が描かれ、「鳴龍」として知られています。
また、舎利殿謡曲『舎利』の舞台としても有名です。足疾鬼という羅刹が盗んだ仏牙舎利を、韋駄天が奪い返すという物語です。中に祀られている仏の歯の存在と、それをめぐる韋駄天の物語を知ると、外観を眺めているだけでも楽しめました。また、安藤教授によると、舎利殿の戸のように上下に開く造りの戸を蔀戸と言うそうです。

次に、両陛下はじめ皇族方の御陵御参詣の際の御休所として、現在も使われている御座所を見学しました。御殿は西に御車寄があり、これに続く一棟は六室に別れ、侍従の間、勅使の間、玉座の間、女官の間、門跡の間、皇族の間と呼ばれています。和室に洋風のテーブルと机が置かれている様子は、不自然に感じました。しかし、どの部屋も襖の絵が細やかで美しかったです。また、椅子の背には、菊花紋章が印されており、特別なものであることを実感しました。
六つの部屋の中でも、玉座の間は一段高くなっており、一際威厳がありました。この部屋の中心には、繧繝縁の厚畳が二枚重ねられ、さらにその上に拝敷きが二枚敷かれていました。拝敷きにも、大きく菊花紋章の刺繍がされていました。また、汚れや黄ばみなどがあり、長く使用されてきたことが分かりました。このような繧繝縁の厚畳などを実際に見るのは初めてだったので、とても感動しました。


玉座の間に面した庭園は、本当に見応えのあるものでした。小さな池、色づき始めた紅葉の赤色や橙色、まだ残る青葉、整えられた白砂利。特に、中央の大きな紅葉の赤色が、とても鮮やかで印象に残りました。そこで少し休憩をして、写真を撮ったりしました。一度縁側に座ると、その景観の美しさと居心地の良さに動きたくなくなってしまい、困りました。

御座所を出ると、隣の建物で「もみじ蕎麦」を販売していました。ちょうどお腹が空いてきた頃だったので、全員で頂くことになりました。ほうれん草が添えられただけの、シンプルな味付けのお蕎麦でしたが、とてもおいしかったです。残念ながら、お蕎麦から「もみじ」の要素は見つけられませんでしたが、大満足でした。食後のデザートとして、会計さんが下さったお饅頭も頂き、お腹も体も温まりました。

次に、霊明殿の東にある月輪陵に向かいました。ここには、四条天皇をはじめ後水尾天皇から仁孝天皇までの二十五陵、五灰塚、九墓が営まれています。御陵拝所の入り口にあった掲示に、そのことが示されていました。御陵拝所は白砂利が敷き詰められており、一般参拝者が入れるのはそこまででした。

最後に自由時間をとり、それぞれ楊貴妃観音堂や宝物館心照殿、鎮守社などを見て回りました。
楊貴妃観音像は、玄宗皇帝が亡き楊貴妃の冥福を祈って造ったと伝えられています。近年は、その美しさから、美容の仏様としても信仰が篤いそうです。
宝物館心照殿は、天皇の御尊像をはじめ泉涌寺の寺宝を、期間ごとに入れ替えて展観しています。私達が訪れた期間には、「俊芿律師とその時代」と「華麗なる近世屏風絵の世界」の展示を行っていました。

泉涌寺はどの場所も見応えがあり、充実した濃い時間を過ごせました。正直、当初の目的であった紅葉に関しては、まだ見頃には程遠かったです。けれども、緑から赤に変わる、自然の色彩の移り変わりを目にすることができたと思います。特に御座所庭園は、どの季節に訪れても、毎回違った美しさを楽しめるのではないでしょうか。個人的にも非常に気に入ったので、違う季節に是非訪れたいです。
最後になりましたが、お忙しい中、参加してくださった皆様に心よりお礼申し上げます。

                                    • -

諸事情により、本年度の報告が著しく遅れてしまいましたことをお詫び申し上げます。
龍谷大学国文学会 ホームページ担当